|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:17 |
「生ひ立たむありかも知らぬ若草を おくらす露ぞ消えむそらなき」
またゐたる大人、「げに」と、うち泣きて、
「初草の生ひ行く末も知らぬまに いかでか露の消えむとすらむ」
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:16 |
と聞こゆるほどに、僧都、あなたより來て、
「こなたはあらはにやはべらむ。今日しも、端におはしましけるかな。この上の聖の方に、源氏の中將の瘧病まじなひにものしたまひけるを、ただ今なむ、聞きつけはべる。いみじう忍びたまひければ、知りはべらで、ここにはべりながら、御とぶらひにもまでざりける」とのたまへば、
「あないみじや。いとあやしきさまを、人や見つらむ」とて、簾下ろしつ。
「この世に、ののしりたまふ光る源氏、かかるついでに見たてまつりたまはむや。世を捨てたる法師の心地にも、いみじう世の憂へ忘れ、齢延ぶる人の御ありさまなり。いで、御消息聞こえむ」
とて、立つ音すれば、帰りたまひぬ。
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:12 |
若紫の君の素性を聞く
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:11 |
「あはれなる人を見つるかな。かかれば、この好き者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり。たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよ」と、をかしう思す。「さても、いとうつくしかりつる児かな。何人ならむ。かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや」と思ふ心、深うつきぬ。
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:11 |
うち臥したまへるに、僧都の御弟子、惟光を呼び出でさす。ほどなき所なれば、君もやがて聞きたまふ。
「過りおはしましけるよし、ただ今なむ、人申すに、おどろきながら、さぶらべきを、なにがしこの寺に籠もりはべりとは、しろしめしながら、忍びさせたまへるを、憂はしく思ひたまへてなむ。草の御むしろも、この坊にこそ設けはべるべけれ。いと本意なきこと」と申したまへり。
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:10 |
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:09 |
「いぬる十余日のほどより、瘧病にわづらひはべるを、度重なりて堪へがたうはべれば、人の教へのまま、にはかに尋ね入りはべりつれど、かやうなる人の験あらはさぬ時、はしたなかるべきも、ただなるよりは、いとほしう思ひたまへつつみてなむ、いたう忍びはべりつる。今、そなたにも」とのたまへり。
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 15:08 |
すなはち、僧都參りたまへり。法師なれど、いと心恥づかしく人柄もやむごとなく、世に思はれたまへる人なれば、軽々しき御ありさまを、はしたなう思す。かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて、「同じ柴の庵なれど、すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ」と、せちに聞こえたまへば、かの、まだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを、つつましう思せど、あはれなりつるありさまもいぶかしくて、おはしぬ。
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 12:58 |
げに、いと心ことによしありて、同じ木草をも植ゑなしたまへり。月もなきころなれば、遣水に篝火ともし、燈籠なども參りたり。南面いと清げにしつらひたまへり。そらだきもの、いと心にくく薫り出で、名香の香など匂ひみちたるに、君の御追風いとことなれば、內の人びとも心づかひすべかめり。
僧都、世の常なき御物語、後世のことなど聞こえ知らせたまふ。我が罪のほど恐ろしう、「あぢきなきことに心をしめて、生ける限りこれを思ひ悩むべきなめり。まして後の世のいみじかるべき」。思し続けて、かうやうなる住まひもせまほしうおぼえたまふものから、昼の面影心にかかりて恋しければ、
仙 道 |
|
|
|
|
|
|
若 紫 |
|
2005/11/22 12:57 |
仙 道 |
|
|
|
|