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テレビ連続ドラマ 《台湾水利の先駆者 八田与一と外代樹夫妻》4
2026/06/01 15:04:18瀏覽17|回應0|推薦0

レビ連続ドラマ

《台湾水利の先駆者 八田与一と外代樹夫妻》4


【第三回】

1、日中シーン
時:大正六年八月中旬のある日正午
場:金沢市東茶屋街
人:蔵成信一、佐藤秀子、通行人

蔵成信一は東茶屋街を散策中、偶然秀子と出会う。

信一:「秀子さんも街歩きですか?」
秀子:「信一君、どうして八田さんと一緒じゃないの?」
信一:「先輩は急用で加賀へ行かれました。実家がそこにあるんです。」
秀子:「じゃあ、あなたはどうして一緒に帰らなかったの?」
信一:「家族以外にはあまり友人もいませんし、与一先輩についていけば水利や土木の技術を学べますから。」
秀子:「そうだったのね。この前、野外の茶屋でアソウが茶を八田さんにかけてしまって、私の叔母はとても申し訳なく思っていて、八田さんに気にしないでほしいと言っていたの。」
信一:「アソウが先輩にお茶をかけた?そんなこと、先輩は何も言っていませんでした。」
秀子:「あら?話していないの?」
信一:「はい。でも、先輩の心の中のことはいくつか知っています。」
秀子:「八田さんの心の中?」
信一:「はい、それで今、少し悩んでいるようです。」
秀子:「悩んでいる?どういう意味?」
信一:「先輩は米村令嬢と見合いをしましたが、本当に好きなのはアソウさんのようです。」
秀子:(驚いて)「八田さんがアソウさんを?まあ、それで人形をわざわざ彫って贈ったのね。」
信一:「先輩は米村家にどう切り出すべきか悩んでいるんです。」
秀子:「そうなのね。このことはアソウに伝えられると思うけれど、実は姉が最近河野家の御曹司と見合いをしていて、その方がややこしいの。」
信一:(不思議そうに)「それは別の話では?」
秀子:「もう、うまく説明できないのよ。」

その時、空から突然雨が降り始め、二人は近くの茶屋へ避難する。

信一:「お茶でもご一緒にいかがですか?どうやら雨はしばらく続きそうです。」
秀子:「仕方ないわね。次は私がご馳走するわ。」

信一は店員に緑茶と菓子を注文する。

秀子:「台湾でずっと働いていると聞きました。」
信一:「はい、与一先輩と一緒に仕事をしています。」
秀子:「台湾は冬に雪が降らず、西瓜やパイナップルやバナナなど熱帯の果物が豊富だと聞きました。」
信一:「そうですね。ただ医療や衛生はまだ遅れていて、伝染病も多いです。そういえば最近、西茶屋街の展示館で台湾をテーマにした写真展が巡回展示されています。よければご案内します。」
秀子:「いいわね。でもアソウさんも一緒に誘いたいわ。」


2、黄昏シーン
時:大正六年八月中旬のある日夕方
場:加賀市中川栄光別荘 客間
人:中川栄光、中川雅子、中川曙月、八田智証、八田与一、女中鶴子

温泉地にある豪華な別荘。八田智証の車が到着し、主人夫妻が玄関で迎える。

栄光:(握手)「智証君、半年以上ぶりだね。元気か?」
智証:「まあ変わらず、日々過ごしているだけです。」
栄光:「電話で弟さんと私の妹を会わせたいと聞き、すぐに東京から呼び戻したよ。こちらが弟の与一君か?」
智証:「はい、弟の与一です。与一、こちらは私の大学時代の友人だ。」
与一:(握手)「中川さん、初めまして。」
栄光:「なるほど立派だ。どうぞお入りください。」

広い客間に長いテーブル。蝋燭が灯り、料理が運ばれる。

栄光:「どうぞお座りください。家庭料理ですが、妹の手料理です。」
智証:「どれも見事な料理ですね。」
雅子:「お褒めいただきありがとうございます。では主役を呼んできます。」

雅子が奥へ。やがて和服姿の曙月が現れる。

栄光:「妹の曙月です。昨年東京美術専門学校服飾科を卒業し、今は職業学校で服飾を教えています。今日の着物も彼女のデザインです。」
智証:「才女ですね。」
雅子:(微笑)「年頃ですし、結婚のことも気にしております。」
栄光:「彼女は静かな性格なので、与一君から積極的に話しかけてください。」
与一:(赤面)「努力します。」

栄光:「智証君、弟さんは台湾総督府勤務だそうだが、結婚後はまた台湾へ戻るのか?」
智証:「与一、答えなさい。」
与一:「はい、結婚後は妻を連れて台湾へ戻ります。仕事が残っています。」
雅子:「長く台湾に住むの?」
与一:「必要があれば長期滞在になります。」
栄光:「若いうちに外で経験を積むのは良いことだ。」
雅子:「曙月、もし結婚を受けるなら台湾で暮らすことになるけれど、いい?」
曙月:(恥ずかしそうに)「夫に従います。どこへでも参ります。」
雅子:「それなら安心ね。台湾は遠くないし、私たちも会いに行けるわ。」
栄光:「さあ、食事にしよう。」


3、夜シーン
時:大正六年八月中旬のある夜
場:加賀市中川栄光別荘 温泉風呂
人:中川曙月、八田与一

温泉の湯船で数尺離れて座る二人。

曙月:「与一さんはずっと台湾でお仕事を?」
与一:「はい、学校を出てからずっとです。」
曙月:「なぜ故郷を離れて台湾へ行こうと思ったのですか?」
与一:「台湾は新しい領土で、建設が必要とされています。そこなら土木技術を活かせます。」
曙月:「台湾のことはあまり知りません。少し教えていただけますか?」
与一:「台湾は日差しが強く、熱帯の島です。中南部には広い平野がありますが、まだ開発が遅れています。」
曙月:「だから長く台湾に?」
与一:「はい、本土から来た技術者は多くの仕事があります。交通や水利など、大きな差があります。」
曙月:「あなたは他の若者と違いますね。多くは故郷を離れたがりません。」
与一:「人それぞれです。ただ台湾には私が必要だと思いました。」
曙月:「土木の仕事とは具体的に?」
与一:「住宅、道路、橋、空港、港湾、ダムなど、設計から施工までです。」
曙月:「台湾は冬でも雪が降らないと聞きました。」
与一:「はい、緯度が低く冬は短く、雪は降りません。冬でも花が咲いています。」
曙月:「まるで楽園ですね。あなたの理想は?」
与一:「水利施設を作り、農民が天候に左右されず安定した収穫を得られるようにすることです。」
曙月:「素晴らしい志ですね。」
与一:「中川さん。」
曙月:「曙月と呼んでください。」
与一:(照れ笑い)「曙月さんは特別に感じます。」
曙月:「どこがですか?」
与一:「台湾を未開だと思う人が多いからです。」
曙月:「でもあなたはそこで働いている。」
曙月:(自信を持って)「あなたが台湾に青春を捧げるなら、その土地はきっと私たちの国のように発展します。」

4、夜中シーン
時:大正六年八月中旬のある夜
場:金沢市米村邸・外代樹の寝室
人:米村外代樹、佐藤秀子

外代樹はベッドの頭に寄りかかって教科書を読んでいる。秀子が入ってくる。

秀子:「お姉さま、すごい秘密を教えてあげるわ!」
外代樹:(本を置く)「すごい秘密?聞かせてちょうだい。」
秀子:「さっき東茶屋街で蔵成君に会ったの。八田与一のそばにいるあの付き人よ。彼がね、先輩が本当に好きなのはお姉さまだって言ってたの。」
外代樹:「私?冗談言わないで。私は彼なんか好きじゃないわ。」
秀子:「覚えてる?最初に二人がうちへ名刺を持ってきた時、お姉さまは水道工事の職人みたいに扱って、きつく怒ったのに、二人はちゃんと礼儀正しく受けていたわ。」
外代樹:「それがどうしたの?あの時は身分も用件も知らなかったのよ。」
秀子:「見合いの後、八田さんが人形を彫ってお姉さまに贈ったじゃない?」
外代樹:「あれは八田さんの一方的な思い込みよ。」
秀子:「それに東茶屋街の茶屋で、前田さんの前で八田さんの悪口を言って、お茶をかけたのに、彼は怒らなかった。」
外代樹:「前田と一緒に怪しいことをしていたからでしょ。」
秀子:「この三つを考えると、蔵成君の話もそれなりに筋が通るわ。」
外代樹:「たとえそうでも、私には関係ないわ。」
秀子:「蔵成君はね、八田さんが米村家の女中アソウさんを好きで、お父さまにどう話すか悩んでいるって言ってたの。」
外代樹:「ふうん?好きならちゃんと自分で言えばいいじゃない。」
秀子:「お父さまに反対されるのが怖いんじゃない?」
外代樹:「怖がって何もしないなら、アソウは気持ちなんて分からないわ。」
秀子:「でも悩むのは普通よ。」
外代樹:「それより明日昼、河野さんと東茶屋街でお茶なの。あなたも一緒に来なさい。」
秀子:「え、完全にお邪魔虫じゃない。八田さんが気の毒になってきたわ。」
外代樹:「いいから明日一緒に来るの。」
秀子:「はいはい……かわいそうな八田与一。」


5、日中シーン
時:大正六年八月中旬のある日正午
場:金沢市東茶屋街・志摩茶屋の露天茶席
人:八田与一、蔵成信一、河野洋平、米村外代樹、佐藤秀子、通行人

作業服姿の八田与一と蔵成信一が自転車で通りかかる。信一が茶席の外に「アソウ」と秀子の姿を見つける。与一を呼び止める。

信一:「先輩、見てください。あれ、米村家の秀子さんと女中のアソウさんじゃありませんか?」
与一:「確かにそうだ。あの男は誰だ?」
信一:「分かりません。今度秀子さんに聞いてみます。楽しそうに話していますね。」
与一:(失望した目で)「いいよ、仕事に戻ろう。」

二人が去ろうとすると秀子が気づき、信一と目が合うが恥ずかしくて手を振れない。秀子は外代樹に目配せする。外代樹が振り向き、二人の背中を見る。

洋平:「知り合い?」
秀子:「ええ、前にうちの水道工事をしてくれた人たちです。」
外代樹:「放っておきなさい。それより話の続きよ、河野さん。」
洋平:「最初に人体解剖学の実習に入った時は……」


6、夜中シーン
時:大正六年八月中旬のある夜
場:金沢市米村邸・外代樹の寝室
人:米村外代樹、佐藤秀子、アソウ

鏡台の前でアソウが外代樹の髪を梳いている。

秀子:「お姉さま、昼間の八田さんの、あの寂しそうな目に気づかなかったの?」
外代樹:「気づいたところで何になるの?私は彼の何でもないわ。それに彼には秋美という上品な後輩もいるじゃない。」
秀子:「……私は誰と付き合うかには口を出さないけど、八田さんが少し気の毒になってきたわ。あなたの正体も知らないのに。」
アソウ:「あら?八田さんにお会いしたの?」
秀子:「東茶屋街で河野さんとお茶をしている時にね。」
アソウ:「八田さんは邪魔しに来なかった?」
秀子:「来なかったわ。信一君と少し立ち止まって見て、それから自転車で仕事に行ったの。」
アソウ:「八田さんは真面目な方です。でもお嬢さまは彼をお好きではないようで……私は何も言えません。選ぶのはお嬢さまですから。」


7、日中シーン
時:大正六年八月中旬のある日午前
場:金沢市西茶屋街
人:八田与一、中川曙月

与一が曙月と西茶屋街を歩く。

曙月:「高校の頃、金沢に来たことがあるの。その時一番印象に残ったのがこの茶屋街よ。お茶とお菓子がとても美味しかったわ。」
与一:「そうですね。ここは歴史のある茶屋が多くて、それぞれに特色があります。台湾で働いていた時、客家の村で『擂茶』というものを飲みました。花生や胡麻、豆類をすりつぶしてお湯を注いで飲むんです。」
曙月:「まあ、あなたは本当に色々知っているのね。東京にいても、懐かしい味に出会うことは少ないわ。」
与一:「東京は忙しくて、ゆっくりお茶を飲む時間もあまりありません。」

曙月が鞄からマフラーを取り出す。

曙月:「これ、私が編んだの。寒いといけないから。」

曙月が与一の首に巻く。

曙月:「色は気に入った?純毛よ。もうすぐ冬が来るわ。」
与一:(感動して)「ありがとう、曙月。あとでお茶をご馳走します。」
曙月:「お茶の後、兼六園にも行きたいの。一緒に来てくれる?」
与一:「はい、一緒に行きましょう。」

8、日中シーン
時:大正六年八月中旬のある午後
場:金沢市兼六園
人:八田与一、中川曙月、米村外代樹、河野洋平

八田与一と中川曙月は並木道を散策している。偶然、同じく園内を訪れていた河野洋平と米村外代樹に出会う。曙月は洋装、与一はシャツと長ズボン、洋平は伝統的な武士服、外代樹は和服という対照的な二組である。

すれ違う瞬間、与一の視線は「偽アソウ」である外代樹に止まり、外代樹は与一の隣の女性を頭から足まで観察する。

外代樹:(心の声)「よくもまあ私のことが好きだなんて言えたものね。八田与一、他の女とデートしているじゃない。しかもまた私に見つかったわ。都会的な女ね。やっぱり彼は都会の女が好きなのね。」

与一:(心の声)「アソウと一緒にいるあの男は、彼女の恋人だろうか。顔立ちは確かに整っている。自分では到底かなわない。」

その時、曙月が振り返って「偽アソウ」に声をかける。

曙月:「そちらのお嬢さん、ハンカチを落としましたよ。」

曙月はハンカチを拾い、外代樹に渡す。

外代樹:「ありがとう。彼氏と一緒にお出かけですか?」

曙月:(微笑)「そうですね。あなたの彼氏の服装はとても個性的ですね。」

外代樹:「彼は私の婚約者です。」

曙月:(微笑)「お似合いですね。お幸せに。」

外代樹の前に立つ八田与一は、その短い会話をはっきりと聞いている。

与一:(苦笑・心の声)「なるほど、アソウにはすでに相手がいたのか……自分は一人で思い込んでいただけだった。」


9、黄昏シーン
時:大正六年八月中旬のある午後
場:金沢市河北郡今村町・八田家客間
人:八田与一、中川曙月、八田春子、八田由紀子、八田誠一、八田智証

八田家が曙月を招いて宴席を開いている。曙月は与一と義姉の間に座る。

由紀子:「曙月さん、この弟は仕事ぶりは本当に申し分ないのですが、性格が少し大雑把で、まだ良いお相手が見つからないのです。三兄が加賀から戻った時にあなたのことを話して、とても良いお嬢さんだと褒めていましたので、ぜひお会いしたいと思っていました。」

誠一:「そうですね、中川さん。五弟は真面目で悪い癖もありませんが、女性を喜ばせるのが少し苦手でして。」

智証:「兄さん、姉さん、あまり驚かせないでください。お客さまですから。」

誠一:「失礼しました。中川さん、気を悪くしないでください。」

曙月:「いえ、とても温かく迎えていただいて、まるで自分の家のようです。」

由紀子:「そうでしょう。ここを自分の家だと思ってくださいね。はい、鶏の腿肉をどうぞ。放し飼いの地鶏でとても美味しいのですよ。」

曙月:(微笑)「ありがとうございます、お義姉さま。自分でいただきます。」

与一:「食卓の野菜は、兄と義姉が無農薬で育てたものです。」

曙月:「まあ、それでこんなに味が澄んでいるのですね。」

由紀子:(笑い)「本当にお上手ですね。ますます好きになりました。」


10、日中シーン
時:大正六年八月中旬のある午後
場:金沢市西茶屋街
人:米村外代樹、佐藤秀子、河野洋平、友人A・B、芸妓三人、通行人

外代樹と秀子は自転車で買い物に来る。そこで偶然、河野洋平とその友人二人が酔った状態で芸妓を抱きながら歩いているのを目撃する。

秀子:(驚いて)「お姉さま、あれ河野さんじゃない?どうして……

外代樹:(顔色を変えて)「まさか自分の目で見ることになるなんて。河野さんってこんな人だったのね。」

秀子:「私が行って叩いてやりましょうか?」

外代樹:(ため息)「いいわ。正体が分かっただけで十分よ。もう関わらない。」

秀子:「それでもまだ彼に期待するの?」

外代樹:「もう言わないで。私は分かっているわ。」

秀子:「でも後で甘い言葉に騙されるかもしれないわよ。」

外代樹:(強い口調)「秀子、一度騙されたら馬鹿よ。二度目は救いようのない愚か者よ。帰りましょう。」


11、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある午前
場:石川県金沢市・米村吉太郎邸の門前および外代樹の寝室
人:米村外代樹、佐藤秀子、アソウ、河野洋平

河野洋平が車で米村家に到着し、呼び鈴を押す。アソウが出る。

洋平:「アソウさん、お嬢さんはいらっしゃいますか?映画に誘いたいのですが。」

アソウ:「河野さん、少々お待ちください。お部屋を見てきます。」

アソウが戻り、外代樹の部屋を叩く。秀子が扉を開ける。

秀子:「もし河野さんなら、お嬢さまは留守だと言って。」

アソウ:「まだ何も言っていないのに、どうして分かるの?」

秀子:「見れば分かるわ。あの派手な車は彼しかいないでしょ。」

アソウ:「何があったの?どうしてお嬢さまは会いたくないの?」

秀子:「とにかく追い返して。あとで説明するわ。」

アソウが門へ戻る。

アソウ:「河野さん、お嬢さまは朝からお出かけでございます。申し訳ございません。」

洋平:「そうですか。昨日映画のチケットを買っていたのに残念です。お嬢さまに伝えてください。」

アソウ:「かしこまりました。お気をつけてお帰りください。」

アソウが門を閉め、部屋へ戻る。

秀子:「帰った?」

アソウ:「ええ。何があったの?」

秀子:「昨日、西茶屋街で見たのよ。彼、友人と酔って芸妓を抱えて、堂々と浮気みたいなことをしていたの。」

アソウ:「やっぱり……あの軽薄そうな方だと思っていました。」

秀子:「お姉さまはもう許さない。でも面と向かって別れるのは避けたいの。」

アソウ:「それがいいと思います。長引かせるより早いほうがいいです。」

12、夜中シーン
時:大正六年八月下旬のある午前
場:石川県金沢市・米村吉太郎邸の門前および外代樹の寝室
人:米村外代樹、佐藤秀子、アソウ

外代樹は寝室にいて、窓辺に座り、八田与一の写真と与一が贈った木製人形を見つめている。心は複雑に揺れている。

外代樹:(心の声)「どうして私は八田与一にあんなに意地悪なのだろう。もし本当にあの年上の男を気にしていないのなら、どうして何度も彼をからかってしまうのだろう。今では父ももう私と与一の交際を無理強いしないのはほぼ確かだ。それなのに、どうして私は少しも嬉しくないのだろう。」

机の前では秀子が尾崎紅葉の『金色夜叉』を読んでいる。

外代樹:(心の声)「『金色夜叉』の貫一とお宮、この結ばれなかった恋人たち。婚約者である貫一と別れ、富豪の富山唯継に嫁いだお宮を、貫一は金に目がくらんだ浅はかな女だと責め続けるだけで、お宮の立場を少しも考えていない。もし男が皆貫一のように嫉妬と復讐心に満ちているのなら、それは恐ろしいことだ。私自身もこんなに強引で攻撃的なのは、『金色夜叉』の未熟な貫一と同じではないか。」


13、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある午前
場:石川県金沢市・東茶屋街
人:八田与一、蔵成信一、米村外代樹、佐藤秀子、前田家護衛武士・小路武一郎、酒井紀夫、小林秀樹、通行人

外代樹と秀子が東茶屋街を歩いていると、三人の武士風の男たちに目をつけられ、呼び止められてからかわれる。

武一郎:(外代樹の腰や肩に手を伸ばしながら)「お嬢ちゃん、いい顔してるな。映画でも一緒に行かないか?」

外代樹:「汚い手で触らないで!」

紀夫:「おやおや、気の強い娘だな。」

武一郎:「気が強い女は嫌いじゃない。」

秀子:「ここは大通りです。失礼でしょう!」

秀樹:(秀子の頬に手を伸ばしながら)「君も綺麗だな。名前は?」

秀子:「触らないで、このろくでなし!」

秀樹:(下卑た笑い)「おおお、こっちの方がさらに気が強いぞ!」

三人の武士が外代樹と秀子を囲み揉み合っているところへ、八田与一と蔵成信一が自転車で通りかかる。与一は外代樹の叫び声を聞く。

与一:「アソウと秀子さんが危ない。信一、行くぞ。」

二人は自転車を降り、駆け寄って救いに入る。与一は武一郎と紀夫の襟をつかんで引き倒し、信一は小林秀樹を蹴り倒す。二人は外代樹と秀子の前に立ちふさがる。

与一:(怒鳴る)「この馬鹿ども!」

三人はすぐに立ち上がる。

武一郎:「英雄気取りか?ここが誰の縄張りか分かってるのか。」

信一:「白昼堂々と女性を侮辱するとは、法律も目に入らないのか。」

紀夫:(大笑い)「法律だと?前田家そのものが法律だ!」

与一:「前田家はこんな連中を野放しにして、家名を汚しているのか!今日は前田秋美様に代わって、お前たち三人の下郎を懲らしめてやる!」

武一郎:「前田秋美?京都の令嬢か?」

与一:「彼女は私の後輩だ。どうだ、怖いか?」

武一郎:「前田秋美なんて関係ない。やれ、兄弟!」

三人は木刀を抜き、与一と信一に襲いかかる。与一は外代樹を背にしているため避けられず、左手で武一郎の木刀を受け止め、右拳で顎を打ち抜く。続いて紀夫の一撃を左手で受け流し、回し蹴りで胸を蹴る。信一は小林の木刀を両手で受け止め、右脚で脇腹を蹴り倒す。

遠くから警笛が聞こえ、三人は警察の到着に気づき木刀を捨てて逃走する。見物人から拍手が起こる。

与一は左腕に激痛を感じ、手首が完全にしびれている。苦痛の表情を浮かべる。

外代樹:(心配そうに)「大丈夫?痛いでしょう?」

与一は右手で左手首を押さえ、痛みをこらえている。

信一:「先輩の左手が!」

外代樹:「蔵成君、車を呼んで。米村病院へ連れて行きましょう。」


14、黄昏シーン
時:大正六年八月下旬のある日夕方
場:石川県金沢市・米村病院 手術室前の廊下
人:八田与一、蔵成信一、外代樹、佐藤秀子、八田智証、米村吉太郎、看護師二名

八田与一が手術室からベッドで運び出される。麻酔が残り眠っている。白衣の米村吉太郎も出てくる。

智証:「米村先生、弟の怪我の状態はどうでしょうか。」

吉太郎:「左尺骨が骨折していましたが、すでに接合し金属固定を行いました。一〜二か月で回復するでしょう。」

智証:「信一からの電話で、東茶屋街で前田家の護衛武士三人と衝突したと聞きました。」

吉太郎:「申し訳ありません。弟さんは小女を守るために負傷したのです。」

智証:「この間は弟の世話をお願いいたします。」

吉太郎:「もちろんです。智証さん、小女と秀子さんは前田家の護衛に街で侮辱され、弟さんも負傷しました。これから前田家へ行き、前田正行殿に正式に抗議しようと思います。ご一緒されますか。」

智証:「弟の件ですから、もちろんご一緒します。」

15、夜中シーン
時:大正六年八月下旬のある夕方
場:石川県金沢市・米村病院 病室
人:八田与一、外代樹、米村吉太郎、看護師

八田与一は眠りの中で「アソウ、アソウ、君はもう婚約者がいるのか?アソウ」と呼び続けている。病床のそばで外代樹がそれを聞き、涙ぐむ。外代樹は与一の手を握り、自分の頬に擦り寄せる。

外代樹:「与一、秀子とアソウの言っていたことは本当だったのね。私があんなにあなたに意地悪をしたのに、どうして私を好きになったの?」

米村吉太郎が看護師を連れて回診に来る。

吉太郎:「与一は目を覚ましたか?」
外代樹:「一度目を覚ましましたが、解熱剤を飲ませたらまた眠りました。」
吉太郎:「娘よ、もうそんなにわがままを言ってはいけない。与一は良い青年だ。その縁を大切にしなさい。」
外代樹:(うなずいて)「お父さま、分かりました。」


16、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある午前
場:石川県金沢市・前田藩主邸
人:米村吉太郎、八田智証、藩主前田正行(六十歳)、総管・利沢泰山(六十五歳)、小路武一郎、酒井紀夫、小林秀樹、武士数名

米村吉太郎と智証は前田正行の邸宅を訪れ、正行が自ら応対する。

正行:「米村殿、本日は令嬢が街中で辱めを受けた件でお越しになったのだな。」

吉太郎:「その通りでございます。藩主殿に公正なるご処置をお願い申し上げ、米村家と八田家へ説明をいただきたく存じます。」

正行:「利沢総管、その三人の下郎をここへ縛り上げて連れて来い。」

総管利沢は「はい」と答え、すぐに部下を連れて行く。三人の騒動を起こした武士は足枷で鎖につながれ、上半身裸のまま引き出される。背中と胸には数十の鞭の痕がある。

正行:「米村殿、八田君、私は前田正行、身内をかばう主ではない。この三人は昨夜すでに処罰済みである。なお不服であれば警察へ引き渡し、法に従って処罰されよ。」

智証:「藩主殿のご判断は明理にございます。我々はこれ以上追及いたしません。」

正行:「利沢総管、この三人は刑堂にて厳重に監督せよ。再び過ちあれば、手足を断て。」

利沢:「はい。」


17、夜中シーン
時:大正六年八月下旬のある夕方
場:石川県金沢市・米村病院 病室および病院廊下
人:八田与一、外代樹、佐藤秀子、蔵成信一

病室で外代樹が与一にスペアリブ粥を食べさせている。

外代樹:「傷はまだ痛む?」
与一:「じんわり痛い。でも看病してくれてありがとう、アソウ。」

外代樹:「ごめんなさい、与一。あなたをからかうべきではなかったわ。私は女中のアソウじゃない。米村外代樹よ。」

与一:(驚いて笑う)「ああ、少し混乱していたようだ。」

外代樹:「あなたが私を米村家の女中だと思っていたから、からかってしまったの。本当はあなたが引いてくれると思っていたの。」

与一:「なるほど。たしかに君には婚約者がいたし、僕は勝手に思い込んで人形まで贈ってしまった。」

外代樹:「婚約者の話も、私が嘘をついていたの。ごめんなさい。」

与一:「どうしてそんな嘘を?」

外代樹:「その時は結婚なんて考えていなかったし、私たちは年齢も離れているから。」

与一:「分かるよ。まだ早いと思っていたんだね。」

外代樹:「でも気持ちは変わったの、与一。」

与一:「変わった?今回の怪我と関係があるの?」

外代樹:(うなずいたり首を振ったりしながら恥ずかしそうに)「う……

与一:「では……僕の求婚を受けてくれる?」

外代樹:(うなずき、恥ずかしそうに)「うん……

与一は大きく喜びをあらわにする。


18、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある午前
場:石川県金沢市・米村吉太郎邸 外代樹の寝室
人:米村外代樹、佐藤秀子、アソウ

外代樹の寝室。外代樹は窓辺に寄りかかり、人形を手にしている。秀子は小説を読み、アソウは隅でアイロンをかけている。

外代樹:(明るい声)「ねえ、聞いて。与一が、正式に私に求婚したの!」

秀子とアソウが同時に顔を上げる。

二人:「本当?」

外代樹:「ええ、私は受けたわ。」

アソウ:「だから最近は『八田家のおじさま』なんて呼ばなくなったのね。」

外代樹:(恥ずかしそうに)「アソウ姐さん、昔はわがままでした。もうからかわないで。」

秀子:「驚きはしないけど、表姐、本当にいいの?東京の大学受験は?」

外代樹:「大学は、またいつでも行けるわ。」

秀子:「そうね。八田さんなら理解してくれるでしょうし、応援もしてくれるはずよ。おじさまには話したの?」

外代樹:「昼に、お寺から帰ってきたら話すつもりよ。」

【第十九回】

19、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある日正午
場:金沢市河北郡今村町・八田家本宅 与一の寝室
人:八田与一、中川曙月、八田智証、蔵成信一

智証と中川曙月が部屋に入ってくる。

智証:「五弟、曙月さんがわざわざお見舞いに来てくれた。」

与一は上半身を起こす。左腕はギプスで固定されている。

曙月:「三兄さんから電話で、怪我と手術のことを聞いて、今はご自宅で静養していると伺いました。」

与一:「曙月、ありがとう。もう大したことはないよ。」

智証:「五弟、曙月とゆっくり話しなさい。私は診療所へ戻る。信一、行こうか。」

信一:「はい、先輩、私はこれで失礼します。」

智証と信一が部屋を出る。曙月は与一のそばに座る。

曙月:「与一さん、三兄さんから聞きました。あなたは米村さんのために怪我をしたのですか?」

与一:「ああ。彼女と従妹の秀子さんが三人の浪人に絡まれたんだ。」

曙月:「あの米村さんというのは、兼六園でお会いして、私がハンカチを拾って差し上げたあの方ですか?」

与一:「そうだ。どうして知っている?」

曙月:「あなたの机の上に彼女の写真があって、裏に署名があったからです。」

与一:「そうか……隠すつもりはなかったんだ。」

曙月:「あの時、彼女の隣に身なりの良い青年がいて、婚約者だと言っていましたね。あなたも聞いていましたよね?」

与一:「ああ。でもそれは僕を遠ざけるための嘘だ。あの時彼女は僕を好きではなかった。」

曙月:「三兄さんは電話で、彼女があなたを何度もからかったと言っていました。」

与一:「ああ。」

曙月:「そんな扱いを受けても、そこまで彼女のために犠牲になる価値があるのですか?」

与一:「分からない、曙月。」

曙月:「彼女の行動を見る限り、まだ未熟な女性です。あなたは他の人を考えてもいいはずです。私も含めて。」

与一:「曙月、気持ちは分かるけれど、僕は……。」

曙月:「それは一時の感情かもしれません。冷静になって考えてください。そして、もし気持ちが整理できたら加賀に来てください。」


20、日中シーン
時:大正六年八月下旬のある日正午
場:金沢市東茶屋街
人:蔵成信一、佐藤秀子

蔵成信一が東茶屋街を歩いていると、秀子と出会う。

信一:「秀子、偶然だね。君も買い物かい?」

秀子:「ええ。蔵成君、八田さんの回復は順調?」

信一:「順調だよ。昨夜は中川さんという女性が加賀からわざわざ与一先輩の家に見舞いに来ていた。」

秀子:「加賀からの中川さん?」

信一:「うん。最近見合いで知り合った女性らしい。」

秀子:「見合いの相手?どうして私にそれを教えるの?」

信一:「実は、与一先輩が好きなのはアソウさんだと知っているからだ。」

秀子:(吹き出して笑う)「もう隠さないわ、信一。八田さんが好きなのはアソウじゃなくて、私の姉、米村外代樹よ。」

信一:(驚く)「え?どういうことだ?与一先輩はアソウが気が強い女性だと言っていたのに。」

秀子:「最初は姉の思いつきだったの。でも、あなたたちをからかうのは良くないと思っていたの。」

信一:「なるほど。じゃああの見合いも冗談だったのか。」

秀子:「ええ。許してあげて。姉はあの時とても子どもっぽかったの。」

信一:(微笑む)「なるほど、与一先輩がアソウを好きになったのは運命みたいなものだね。」

秀子:「だから中川さんのことを私に話したの?」

信一:「そうだ。心から、与一先輩と……いや、外代樹さんが幸せになることを願っている。」



( 創作連載小說 )
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