字體:小 中 大 |
|
|
|
| 2026/06/10 20:37:43瀏覽15|回應0|推薦0 | |
テレビ連続ドラマ
1、昼の場面 時:大正十二年二月のある午前 △八田外代樹の独白 大正十一年、工事開始から二年後、與一はアメリカへ大型土木機械の購入に赴いた。同年、私たちの次女・綾子が誕生した。與一と藏成信一、白木原民次の三人はアメリカへ渡った。烏山頭トンネル工事の総予算は一千六百万元であり、そのうち機械費用四百万はほぼ四分の一を占めていた。重機の導入は工事に不可欠であり、與一はアメリカでの機械購入に加え、カナダやメキシコのダムも視察した。 與 一:「外代樹、このたび私はアメリカへ機械を買い付けに行く。数か月は帰れないだろう。君を家に残して子どもを見させることになり、責任ある夫とは言えないな。」 外代樹:「そんなこと言わないで。仕事が一番大事なのだから、私たちのことは心配しないで。子どもは私と秀子でちゃんと見ておくわ。むしろ外で働くあなたこそ体に気をつけて、私を心配させないで。」 與 一:「君と結婚してから、私は出張続きで一緒にいる時間が少なかった。本当に苦労をかけているな。」 外代樹:「男は外で働き、女は家庭を守るものよ。それぞれの役割を果たしましょう。もし毎日家にいても、私は幸せにはなれないわ。私は、理想のために努力する上昇志向のある夫を望んでいるの。」 民 次:「嫂さんは本当に分別のある女性ですね。所長が彼女と結婚できたのは幸運です。」 信 一:「その通りです。西洋にも『成功した男の背後には必ず賢明な女性がいる』という言葉があります。嫂さん、安心してください。我々が所長をしっかりお守りします。」 與 一:「阿部、私の不在中も以前言った通り、人間的な管理を忘れるな。内地人も本地人も区別せず平等に扱え。」 阿 部:「はい、所長!」 與 一:「政夫、所の仕事全般は阿部を支えてくれ。阿部も困ったら政夫に相談しろ。二人とも私の両腕だ。」 △阿部と政夫:「はい、所長!」 與 一:「信義、留守の間は嫂と子どもたちを頼む。」 林信義:「はい、所長。」 △與一は妻を抱きしめ、名残惜しく別れる。外代樹は列車に乗る與一たちを見送る。 2、昼の場面 時:大正十一年三月のある午後 △工事現場にて、工人・許阿火が熱中症で倒れかけ、工頭・蔡光明が日陰で休ませる。監工・本田は事情を知らず、サボりと誤解し阿火の胸腹を蹴り、阿火は血を吐いて倒れる。 本 田:「この怠け者め!皆が働いているのにお前だけ日陰でサボるとは何事だ!」 光 明:「あっ!阿火が血を吐いた!本田、休ませたのは私です!」 本 田:「私の許可なく休むことは許さない!」 光 明:「体調が悪いと言っていたんです!これは熱中症かもしれません。事情も聞かずに殴るとは!」 △両者が口論となり、台湾人工人たちが本田を取り囲む。本田は棍棒を振り回し数人を殴るが、逆に制圧される。本田は出張所へ連行される。阿火も担ぎ込まれる。騒然とした状態で事務所へ。 阿 部:「何があった?」 工人甲:「監工が人を殴りました!阿火は血を吐いています!」 阿 部:「本田を離せ!」 △工人たちは本田を放す。 阿 部:「本田、工人は何かしたのか?」 本 田:「彼らが私に暴力をふるったのです!」 阿 部:「なぜそんなことになった?」 本 田:「許阿火がサボっていたので注意したら、工頭の蔡光明が反発し、工人たちが集団で私を殴りました!」 光 明:「違います!本田が先に阿火を殴ったんです!」 阿 部:「黙れ!いずれにせよ工人が監督に暴力をふるうのは許されない!」 工人乙:「違います!監工が先に阿火を殴ったんです!」 △阿火が担ぎ込まれる。胸は血で染まり苦しそうに目を閉じている。 △湯本政夫が前に出る。 政 夫:「これは明らかに内傷です。すぐ医務室へ運びなさい。阿部君、私は本田が先に手を出したと思う。」 阿 部:「しかし上下関係を破って監督を殴るのは問題だ。」 政 夫:「冷静に処理しないと大問題になる。所長の言葉を思い出してください。」 阿 部:「……分かった。君に任せる。」 △阿部は去る。 政 夫:「本田、監督であっても暴力は権限外だ。」 本 田:「仕事が遅れると思ったんです!」 政 夫:「まず工頭に注意し、記録を残すべきだった。医療費と休業補償は全額自己負担。さらに過失として戒告二回。」 本 田:「……」 政 夫:「不服なら所長帰任後に正式に申し立てろ。」 △工人たちは政夫の処理に拍手する。林信義も感服する。 3、夕方の場面 時:大正十一年三月某日夕方 △林信義が卵と果物を持って入る。 林信義:「嫂さん、卵と果物を持ってきました。」 外代樹:「毎回申し訳ないわね。」 林信義:「市場で買っただけですから近いですよ。」 外代樹:「夕食は米雅も呼びましょう。もう一品多く作るわ。」 林信義:「ありがとうございます。」 外代樹:「出産予定は何月?」 林信義:「八月です。」 外代樹:「体には気をつけてね。妊娠は大変だから。」 林信義:「米雅は山で育ったので丈夫です。」 4、昼の場面 時:大正十一年五月のある午後 △監工吉永と工人蔡木生が口論。 吉 永:「財布がない!蔡木生、お前が盗んだのか?」 蔡木生:「冤罪だ!見たこともない!」 吉 永:「前科があると資料にある!」 王阿保:「証拠もなく決めつけるのはおかしい!」 吉 永:「関係ない!」 王阿保:「話にならん!」 吉 永:「身体検査させろ!」 蔡木生:「やるわけない!」 △一行は出張所へ。 阿 部:「どうした?」 吉 永:「財布がなくなった。蔡木生が怪しい。」 阿 部:「本当に持っていないなら検査に応じるか?」 蔡木生:「阿部技師なら構いません。」 △検査するが発見されない。 阿 部:「見つからないな。」 政 夫:「証拠がないなら疑うべきではない。」 吉 永:「財布が勝手に消えるのか!」 阿 部:「以上、解散。」 △政夫が後から来る。 政 本:「よく処理した。」 阿 部:「まだまだだ。」 5、夜の場面 時:大正十一年八月のある深夜 △深夜、林信義が八田宿舎の扉を叩く。 林信義:「嫂さん、早く開けてください!嫂さん!」 △外代樹はノックの音を聞き、起きて服を着て玄関へ向かう。 外代樹:「信義、あなたね!」 林信義:「妻のミヤの羊水が破れました。もうすぐ出産です!」 外代樹:「慌てないで。手伝うわ。あなたは先に病院に持っていく荷物を準備して。私は秀子を起こしてすぐ合流するわ。」 △外代樹と秀子は林信義の宿舎へ向かう。 △医務所病室。林信義が生まれたばかりの女児を抱き、満面の喜びを浮かべている。秀子が横で様子を見ている。 秀子:「はっきりした顔立ちね、まるで西洋人形みたい。」 林信義:「そうだな、母親に似てとても綺麗だ。」 外代樹:「秀子、あなたと信一も頑張らないとね。」 秀子:「どうしようもないわ、姉さん。私の問題じゃないもの。」 外代樹:「信一は医者に診てもらったの?」 秀子:「ええ。医者は、今のところ有効な治療法はないと言っていたわ。自然に任せるしかないって。でも私たちは大志がいるから。」 外代樹:「信義、産後の世話はちゃんとしてあげてね。それはとても大事よ。後で鶏スープを作って持ってくるわ。」 林信義:「嫂さん、本当にありがとうございます。」 6、夜の場面 時:大正十一年十二月2日夜 △與一がアメリカから帰国し、外代樹と共に林信義夫妻を訪ねる。 林信義:「兄さん、阿部技師から昨夜帰国したと聞きました。駅まで迎えにも行かず、こうしてわざわざ訪ねていただくなんて申し訳ありません。」 與 一:「信義、私たちは私的には兄弟だ。遠慮するな。君の妻がもうすぐ母になると聞いていたので、アメリカでこの子のことを思い出していた。性別は分からなかったが、ぬいぐるみを買ってきた。男でも女でも喜ぶだろうと思ってね。」 ミヤ:(微笑)「與一兄さん、ありがとうございます。」 外代樹:「ミヤ、お母さんは思麻丹社に戻って産後の世話をするよう言っているの?」 ミヤ:「母がこの数日で来てくれるそうです。」 外代樹:(微笑)「それなら安心ね。」 7、昼の場面 時:大正十一年十二月6日午後 △出張所会議室。 與 一:「皆さん、今回の北米水利視察では大型土木機械も視察し、各部門の要望に基づいて機械を購入する。」 信 一:「これらの機械は高価であるため、訓練を終えた後に順次各請負業者へ配備する。操作・保守に関しては必ず厳格に監督し、事故を防ぐこと。」 民 次:「操作要員は請負業者から選出し、私と藏成技師が直接訓練します。」 與 一:「蒸気機関車、ダンプ車、一部の掘削機・ブルドーザーは山根の大内庄採土場へ、残りは堤防排水路と烏山嶺導水トンネル工事へ配分する。完成後は堤防工事へ移管する。異論はあるか?」 △全員:「ありません。」 與 一:「機械操作は規定通り行い、定期整備を徹底せよ。また作業員の安全を常に確認すること。」 △全員:「はい!」 8、昼の場面 時:大正十一年十二月6日午後 林信義:(慌てて駆け込む)「所長!大変です!事故です!」 △室内の全員が一斉に林信義を見る。顔や手は煤で黒くなっている。 與 一:「信義、どうした!」 林信義:「烏山嶺導水トンネル工事現場で大爆発事故が発生しました!」 與 一:(立ち上がる)「何だと!爆発事故だと?」 林信義:「藏成監造と湯本技監は現場に残って救助を指揮しています。」 林信義:「坑内作業中に天然ガス層に当たり、火花が引火して連続爆発が起きました……」 與 一:「阿部、すぐ医務所へ連絡し、医療班を現場へ向かわせろ!他の者は私と共に現場へ!」 阿 部:「はい、所長!」 △全員がヘルメットをかぶり、與一の後に続いて出発する。 △坑道現場。負傷者と遺体が次々と運び出される。 信 一:「所長……今回の事故、本当に申し訳ありません……」 與 一:「死傷者は何人だ?」 信 一:「死亡者はまだ集計中ですが、約五十体ほど確認されています。」 與 一:「五十……どうしてこんなことに?」 政 夫:「坑道九百メートル地点で突然ガスが噴出し、火花で引火しました。」 與 一:「事前にガス漏れはなかったのか?」 政 夫:「ありました。以前から微量のガスが出ていました。工人が石油膏を持ち帰るほどで、油質も似ていました。私は坑内禁煙を指示しましたが、大倉組の宮田技師と三宅監工は安全だと判断し掘削を続行しました。」 與 一:(激怒)「馬鹿者!なぜ事前に報告しなかった!」 政 夫:「所長が渡米中の出来事で、発見直後で報告が間に合いませんでした。」 與 一:(落胆)「これは天の試練なのか……」 信 一:「所長、私と政夫は処分を受けます。」 與 一:「今は責任追及の時ではない。まず作業を停止し、後処理を行え。」 宮 田:「大倉総裁は明朝現地に到着予定です。」 與 一:「宮田技師、この事故の調査報告書を必ず提出しろ。」 宮 田:「はい……所長……」 9、昼の場面 時:大正十一年十二月7日午前 △医務所内外に負傷者が横たわる。 △外代樹の独白 この事故により、死者は五十名を超えた。烏山頭は深い悲しみに包まれた。その間、與一と幹部たちは遺族と負傷者の対応に追われた。 △與一は幹部と共に医務所で対応。外代樹と技師夫人たちは負傷者の手当を行う。 與 一:「医師、薬が不足すればすぐに報告してくれ。」 医 師:「薬品は台南・嘉義から調達済みですが、病床が不足しています。」 與 一:「信一、学校長に頼み講堂を借りて負傷者を収容してくれ。」 信 一:「はい、すぐに行きます。」 外代樹:「私たちもできる限り協力します。」 與 一:「政夫、遺族への補償は簡略化し、予備金から即時支給しろ。」 湯 本:「はい、所長。」 喜八郎:「今回の事故は我々大倉組の安全管理不足です。深くお詫び申し上げます。」 與 一:「大倉組だけの問題ではない。私も局長に処分を申し出る。」 10、日劇 時:大正十一年二月上旬二月九日上午 景:烏山嶺隧道口附近の一處高地プラットフォーム 人:八田與一、藏成信一、阿部貞壽、林信義、湯本政夫、大倉組総裁大倉喜八郎、大倉組技師宮田貞一、大倉組監工三宅陽介 △八田與一は部下を率い、大倉土木組総裁大倉喜八郎、技師宮田貞一、監工三宅陽介等と共に烏山嶺を会勘する。一行は烏山嶺隧道口付近の高地プラットフォームに到着し、討論を行う。 宮田:「八田所長、先の測量図と、我々が先ほど歩いてこの一帯を実地に勘察し記録した資料によれば、あなたと藏成、湯本両技師の設計には問題はないと思います。」 喜八郎:「確かに、もし原設計を放棄して露天の引水道を採用すれば、烏山嶺の地質は破砕され崩壊も甚だしく、引水道の維持は必ず大問題となるだろう。それに最短の直線距離を捨てて烏山嶺を迂回する露天引水道にすれば、長さは八キロに増加し、必ずしも経済的とは言えない。」 與一:「大倉総裁のご意見は、原案を維持するということですか?」 喜八郎:「はい。それに引水隧道はすでに三分の一近く掘削が進み、関連費用もほぼ半分投入されている。ここで中止することはできない。それではあの五十数名の殉職者が浮かばれない。」 與一:「信一と政夫、あなた方の意見はどうか?」 信一:「私は大倉総裁の意見に同意します。」 政夫:「私も同じです。」 與一:「分かりました。事故調査鑑定報告が出るまで施工は継続せず、その後に再開します。」 11、日劇 時:大正十一年二月上旬某日正午 景:烏山頭出張所辦公廳會議室、烏山嶺隧道口 人:土木局長山形要助、八田與一、阿部貞壽、藏成信一、湯本政夫、林信義、大倉喜八郎、宮田真人、三宅陽介、工人數名 △烏山頭出張所辦公廳會議室の雰囲気は重い。 山形:「この事故の報告は総督府に伝わり、田健次郎総督は非常に驚いている。総務長官賀来佐賀太郎が、私に特別に南下して事件の原因を調査するよう命じた。」 喜八郎:「今回の労働災害事故は、大倉土木組の形象と名声を大きく損ない、さらに八田所長とそのチームにも累を及ぼしました。ここに山形局長へ深く謝罪し、我が大倉喜八郎は一切の責任を負います。」 與一:「局長、この労働災害事故が上層部を驚かせたことについて、深くお詫び申し上げます。私はすでに報告書を作成し、ここに烏山頭所長の職を自ら辞し、行政上の過失責任を負います。」 信一:「局長へ報告します。今回の事故は私の監造監督不十分によるものであり、私は湯本技師と共に所長へ書面で辞任を申し出、いかなる処分も受け入れる所存です。」 湯本:「藏成技師は関係ありません。彼は八田所長とともに出国調査から戻ったばかりであり、事故の原因は私の不注意によるものです。」 山形:「皆さんは責任感のある技師だ。私は安心した。このような重大事故について、総督と私が知りたいのは発生原因であり、事後の責任追及は原因解明の後に議論する。」 與一:(両手で報告書を差し出す)「報告書をご覧ください。」 山形:「烏山嶺引水隧道工事がこのように困難である以上、所長はどのような対策を考えているのか?」 與一:「設計変更を考え、烏山嶺を迂回する案も検討しました。しかし再度の実地調査の結果、その案は断念しました。露天の引水道は距離が二倍以上に伸び、また多くの地質破砕の斜面を通過するため、崩落土砂で容易に閉塞され、維持管理が極めて困難だからです。」 山形:「それももっともだ。すでに三分の一は完成している。」 與一:「烏山嶺引水隧道工事は、責任が未確定の間は一時停止とします。」 山形:「うむ。田健総督の判断次第だろう。総督がこの局面で急に指揮官を交代させることは考えにくい。八田以外にこの重責を担える者はいない。」 與一:「調査を待ち、処分を受けます。」 山形:「では皆で事故現場へ行き、工人から直接事情を聞く。」 △一行は徒歩で隧道口へ向かう。山形要助は与一、大倉喜八郎と共に隧道内部を視察し、その後留守の工人と面談する。 山形:「事故の経過を説明してください。事実通りに述べるように。」 工人甲:「爆発が起きた時、私は坑道口に近い場所におりました。まず爆発音を聞き、その直後に激しい炎と強い熱風が坑道奥から押し寄せてきました。私たちは炎でやけどを負い、髪や衣服にも火がつき、地面に倒れて転がり火を消しました。その後坑道出口へ走りました。その時三宅監工と林信義主任が来て、川で体を濡らし、再び坑道へ救助に入るよう指示しました。」 山形:「以前の掘削で石油の凝結やガス漏れがあったのに、なぜ直ちに上に報告しなかったのか?」 工人乙:「林信義主任と三宅監工には報告しました。湯本技監は一日工事停止を命じ、ガス漏れの検査を行いました。」 湯本:「坑道内では火気厳禁とし、煙草も禁止しました。」 山形:「口を挟むな、湯本技監。工人の話を聞いている。八田所長と部下は一旦退避しなさい。」 與一:「はい、局長。」 △与一は阿部、林信義、湯本に退避の合図をする。 工人甲:「掘削機械の作業では火花が出ます。その日は天然ガス層に当たり、ガスが漏れていましたが、作業員はマスクをしており気づかず作業を続行し、火花が空気中のガスに引火して連続爆発となりました。」 山形:「なるほど、理にかなっている。予防は確かに困難だ。」 山形:「事件の経過は概ね把握した。八田所長、重大事故で多数の死傷者が出たことについて、賀来総務長官は非常に重視している。行政責任は相応の職位が負う必要がある。」 與一:「局長、私は行政監督の過失責任を負い、烏山頭所長職を辞任いたします。」 山形:「所長を辞任?では誰がこの職を引き継ぐのか。そんなのは責任の取り方ではない。子供の遊びではない。」 與一:「……」 山形:「懲戒処分とする。まずはあなたの級で責任を明確にし、部下の責任はあなたが取りまとめて報告せよ。」 與一:「はい、局長。」 12、夜劇 時:大正十一年二月中旬某日夜 景:烏山頭八田官舍八田書房 人:八田與一、外代樹、正子(満二歳未満) △書房で與一は窓の外を見つめ、放心している。外代樹が入ってきても気づかない。 外代樹:「與一、この数日ずっと沈んでいるようね。まだ工安事故の影の中にいるのね。」 與一:「あっ、夫人……。子供はもう寝たか?」 外代樹:「正子は寝たわ。この事故を大きな挫折と思っているのでしょう。でも教訓を得たなら、すぐに立ち直らなければならない。あなたはここの責任者なのだから、士気の落ちた全ての工事人員を再び立ち上がらせる役目があるの。」 與一:「亡くなった仲間たちに申し訳ない。彼らは私と共に烏山頭に来て、事故で命を失い、ここに眠っている。」 外代樹:「その罪悪感を軽くしたいなら、遺族の生活をしっかり支えるべきよ。彼らは生活の支柱を失ったのだから。」 與一:「その通りだ。夫人、あなたの言葉が私を再び立ち上がらせた。」 外代樹:「夫婦は苦楽を共にするものよ。」 與一:「半年分の給与を、弔慰金として遺族支援に寄付したい。」 外代樹:「それでいいのよ。私は支持するわ。」 △外代樹は與一を抱きしめ、背を優しく叩く。 13、日劇 時:大正十一年十二月十日午前 景:烏山頭出張所会議室 人:八田與一、瓦歴斯・貝林、湯本政夫、林信義、小田省三、織田謙雄、大那庄採土場長山根長次男、機械係長藏成信一、水利係長阿部貞壽、監督係長白木原民次、調査係長小原一策、工務係長川山丈澄、大倉喜八郎、宮田真人 △烏山頭出張所会議室で会議が開かれている。 與一:「今回の烏山嶺引水隧道爆発事故は、現場管理幹部の警戒不足に起因する。大圳職員については当所規程に従い行政責任を追及し、私は自ら大過一回、藏成技師大過一回小過二回、湯本技師大過二回、林信義工地主任大過二回とする。異議はあるか?」 阿部:「所長、処分が重すぎませんか?」 與一:「五十数名の命だ。この処分でしか警鐘は鳴らせない。」 喜八郎:「今回の重大事故について最も反省すべきは我が大倉組であり、深く謝罪する。遺族および重傷者については必ず適切に支援する。」 △大倉喜八郎と宮田真人が起立し、三度礼をする。 與一:「殉職者の家族は大圳組が生活支援し、重傷者は養護する。子弟の学費は本所経費で負担する。私の処分について異議はあるか?」 △沈黙。 與一:「異議なしと見なし、決定する。今回の教訓を忘れず、施工管理を徹底し、問題があれば即時報告せよ。」 14、夜劇 時:大正十一年二月中旬某日深夜 景:烏山頭宿舍区阿部貞壽宿舍書房 人:阿部貞壽、藏成信一、湯本政夫 △深夜、三人は酒を飲んでいる。 阿部:「信一、政夫、本当に行くのか?」 信一:「これほどの事故があった以上、残れば所長や遺族に顔向けできない。」 阿部:「それは自責が過ぎる。残って善後処理をするべきだ。」 信一:「我々は所長の期待を裏切り、局長からも大過を受けさせてしまった。」 阿部:「今ここを去れば、所長にとっては大きな打撃だ。」 湯本:「事故は起きた。誰かが責任を取らねばならない。」 阿部:「山形局長は所長が責任を負うと言った。直接所長に話すべきだ。彼は理性的で情のある人だ。」 湯本:「もう止めてくれ。今夜は飲もう。」 15、日劇 時:大正十一年二月中旬某日正午 景:烏山頭出張所事務所、番仔田駅 人:八田與一、阿部貞壽、藏成信一、秀子、大志、湯本政夫、林信義 △八田與一が出張所事務所に入った途端、林信義が二通の封筒を持って来る。一通は八田所長宛の辞表であり、もう一通の封筒には厚い現金の束が入っている。 林信義:「所長、藏成技師と湯本技師は今朝そろって出発しました。二人はあなた宛の手紙と、そして一筆の現金寄付を残して行きました。」 阿部:「信一と政夫は昨夜宿舎に私を訪ねて来て、いろいろな心中を語りました。二人はすでにここを去る決意を固めているようでした。」 與一:「おお?その手紙を見せてくれ。」 八田所長閣下: 信一と政夫は長官のご厚意に背き、自らの過失に対しすべての責任を負わねばなりません。ここに正式に辞職を申し上げます。残された現金は殉職者遺族の扶助にお使いください。 公においてはあなたは私の上司であり、私的には同郷の先輩であり義兄でもあります。信一はあなたのご指導とご信頼に深く感謝し、烏山嶺引水隧道という重責を担いましたが、私の力不足によりこれを果たせませんでした。もはや政夫と共に現場に留まる顔がありません。どうか辞職と謝罪をお許しください。 與一:「阿部、昨夜二人は他に何と言っていた?」 阿部:「とても落ち込んでいて、所長の期待を裏切ったと悔やみ、すべての責任を自分たちが負うと言っていました。」 與一:(激怒)「ばか者!信一と政夫のこの馬鹿者どもめ!私は所長だ、責任は私が負うべきだ!私が辞表を承認していないのに、勝手に書き置きを残して去るとは何事だ!」 阿部:「所、所長、私は全力で引き止めましたが……」 與一:「二人はいつ出た?」 林信義:「およそ三十分前です。おそらく番仔田駅から最初の列車に乗るつもりかと。」 與一:「信義、すぐに公用車を用意しろ!我々が追いかける!」 △林信義が運転し、二人は番仔田駅へ向かう。與一は車を降りるとそのままホームへ駆け上がる。改札係は八田所長だと気づき、勢いに圧倒されながらも通す。林信義も後に続き「公務執行中」と告げて入場する。二人はホームで藏成信一と湯本政夫の襟首をつかむ。 與一:(皮肉を含んだ笑み)「藏成技師、湯本技師、朝早くから荷物とは、どこへ旅行だ?」 信一:(驚愕)「所長、私たちは……」 與一:「まさか臨戦放棄で逃亡するつもりか?」 湯本:(動揺)「私……私は……」 秀子:「義兄さん、信一を責めないで!あの人は誰よりも苦しんでいるの!」 與一:「手紙は読んだ。戻るぞ烏山頭へ。今は逃げる時ではない。後始末を共にする時だ!」 林信義:「そうです、所長を一人にしてはいけません!」 與一:「あの日烏山嶺を視察した時、私はこの工事を信一に任せると言った。なぜだか分かるか?」 信一:(唇を噛み頷く)「……分かっています。」 與一:「私はお前たちを信頼している。信一は機械に詳しく、政夫は冷静で判断力がある。だから最も困難な烏山嶺引水隧道を任せたのだ!」 湯本:(号泣)「しかし所長……私は期待を裏切りました!」 信一:「監造である私の責任が最も重い!」 與一:(政夫を支えながら)「責任を認めるなら、なぜ今この時に私を見捨てる?どんな困難でも共に乗り越えるべきだろう!」 林信義:「戻りましょう、皆で!」 秀子:(大志の手を握り信一の袖をつかむ)「行かないで、烏山頭に戻りましょう……」 △信一はゆっくり頷き、頬に涙が流れる。 16、日劇 時:大正十一年二月中旬某日正午 景:烏山頭出張所横広場・合同慰霊式会場 人:八田與一、阿部貞壽、藏成信一、白木原民次、湯本政夫、林信義、小田省三、小原一策、織田謙雄、大倉喜八郎、宮田真人ら工事関係者、台南州知事吉岡荒造および来賓、遺族代表 △烏山頭出張所前の広場に仮設された慰霊会場。八田與一が主祭官を務める。 △台南州知事吉岡荒造が来場し、随行員とともに焼香し礼を行う。 △八田與一、阿部貞壽、藏成信一、湯本政夫は遺族の列に一人ずつ向き合い、慰問金を手渡し抱擁する。 與一:「ご冥福をお祈りします。」 信一:「申し訳ありません。」 喜八郎:「ご冥福を……申し訳ない……すべて私の責任です。」 政夫:「ご冥福をお祈りします。どうかお体を大切に。」 17、日劇 時:大正十二年九月某日夜 景:台南大圳組合本部管理室 人:八田與一、枝德二 △八田外代樹の独白 「屋漏りに夜雨を重ねる」とはこのことだった。翌年九月一日、関東平野で大地震が発生し、東京および関東一帯に甚大な被害が及んだ。救援のため台湾総督府も救援金を本土へ拠出し、嘉南大圳の建設補助金も影響を受け、予算が削減された。そのため與一はやむなく半数の職員を解雇せざるを得なかった。 枝德二:「八田所長、先ほど土木局の山形局長から電話がありました。総督府は関東大震災の救援のため本土へ資金を拠出し、大圳の補助金が削減されました。」 與一:「私もラジオでそのニュースを聞きました。補助金が削減されれば、職員の一部を解雇せざるを得ません。しかし工事監督にも大きな影響が出ます。」 枝德二:「それはやむを得ません。この件は所長に一任します。」 與一:(苦悩)「皆まじめに働いている者ばかりだ。彼らを解雇するのは非常に心苦しい。」 枝德二:「あなたが苦しむのは分かりますが、これは山形局長の判断です。」 18、夜劇 時:大正十二年九月某日夜 景:烏山頭八田宿舎書房 人:八田與一、外代樹 △深夜、與一は資料を読み続け、秋の烏山頭は冷え込んでいる。 外代樹:「少し休んだ方がいいわ。体を壊すわよ。」 與一:「ああ、夫人。子供たちは寝たか?」 外代樹:「正子も晃夫も綾子もみんな寝ているわ。」 與一:「子供たちは何も憂いなく暮らしている。」 外代樹:「あなたはずっと悩みを顔に出しているわね。」 與一:「解雇される職員のことが気がかりなだけだ。」 外代樹:「あなたなら必ずうまくやれるわ。」 與一:「優秀な技術者だけを残そうと思うのだがどう思う?」 外代樹:「優秀な人ほど次の職はすぐ見つかるわ。むしろ他の人の方が困るのでは?」 與一:「なるほど……」 19、夜劇 時:大正十二年十月某日夜 景:烏山頭宿舍区林信義宿舍 人:八田與一、林信義、米雅、小女嬰 △與一が夜訪し、米雅が茶を出す。 與一:「信義、少し話がある。」 林信義:「どうぞお飲みください。」 △解雇通知書を渡す。 與一:「このたび君を解雇対象に含めた。申し訳ない。」 信義:(驚愕)「なぜですか?能力不足ですか?」 與一:「逆だ。君は極めて優秀だ。」 信義:「ではなぜ?」 與一:「優秀だからこそだ。君には別の道で活躍してほしい。生活の安定のためだ。」 信義:「分かりました。」 20、日劇 時:大正十二年十月某日午前 景:大倉土木組台南本部・各工事現場 人:八田與一、藏成信一、大倉喜八郎、中島力男 △各地の現場で與一は再就職のため奔走する。 △外代樹の独白 部下たちは與一が涙を流しながら奔走する姿を見た。彼は解雇者の再就職のため尽力し、技術者の能力を安売りすることを嫌った。その姿から部下たちは彼が見捨てたのではないと理解した。 與一:「喜八郎総裁、総督府の補助金削減により大圳組合は人員半減となった。中島技師を御社で受け入れていただきたい。」 喜八郎:「我々も同様に苦しい状況だが、日月潭工事の主任としてなら受け入れよう。」 中島:「承知しました。」 喜八郎:「では任命書を持って赴任せよ。」 與一:「ありがとうございます。」 |
|
| ( 創作|連載小說 ) |













