... そのあとC小姐が紳士に住所を伝え、目的の店に向かう。
私はこの時初めてまだ行くところがあるのだ、と知った。
着いた場所は長安東路一段、華山公園のそばのマンション。
こちらも2階のワンフロアを利用してサロン風にしつらえている。
ここはお茶と茶人料理の店。
コースのみの昼食と夕食。人数限定で予約を取る。
残念ながら私が台北に滞在している間は食事の予約は満席で、
お茶だけ飲ませていただくという話でC小姐はお願いしてくれていた。
6時過ぎにはやってくるだろうと待ち続け、
亭主の蔡奕哲氏もスタッフの小姐もさぞかしイライラしていたことだろう。
おまけに到着した9時はちょうど閉店の時間なのだから。
それでも蔡さんはニコニコと応対してくれて
(小姐はちょっとムッとしていたが)
一時間だけという約束で、早速お茶をいれてくれた。
時間もないので、この日はお任せで岩茶を二種。
昨年の奇蘭と今年できたばかりの千里香。
ここでも大陸茶なのね。
え、これが岩茶?とびっくりするような清らかさだった。
日本で飲む岩茶とは全く違う味わい。
蔡さんは武夷山に行ってきたばかりとのことで、写真を見せてくれた。
茶畑を確認し、正真正銘の正岩茶だけを仕入れてくる。
彼もとことん有機と伝統製法にこだわって茶葉を選んでいるのだ。
お茶を丁寧にいとおしそうにいれる様子がとても印象的。
このお店を始めて何年になるのか尋ねると、4年だと言う。
その前は日系の電機メーカーに勤めていたそうだ。
(日本語はダメらしい。英語はOK。)
ずっとお茶が好きだったが、学生の時に電機関係を専攻したので、
一定の期間は社会に還元しなくてはいけない、とお勤めをしたのだとか。
その誠実な答えにちょっと感動してしまった。
スーツを脱ぎ、ゆったりとした服をまとった蔡さんはまさに茶人だった。
私はもう少しゆっくり時間を取って台湾のお茶もいただきたい、と告げると
明日の夜、もう一度来てくれと約束をとりつける。
夕食の予約が入っているので、その客が引ける8時半ごろということになった。
台北の旅二日目、長い一日が終ろうとしていた。