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若 紫 |
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2005/11/21 03:50 |
「かしこに、いとせちに見るべきことのはべるを思ひたまへ出でて、立ちかへり參り來なむ」とて、出でたまへば、さぶらふ人びとも知らざりけり。わが御方にて、御直衣などはたてまつる。惟光ばかりを馬に乗せておはしぬ。
門うちたたかせたまへば、心知らぬ者の開けたるに、御車をやをら引き入れさせて、大夫、妻戶を鳴らして、しはぶけば、少納言聞き知りて、出で來たり。
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/21 03:37 |
「ここに、おはします」と言へば、
「幼き人は、御殿籠もりてなむ。などか、いと夜深うは出でさせたまへる」と、もののたよりと思ひて言ふ。
「宮へ渡らせたまふべかなるを、そのさきに聞こえ置かむとてなむ」とのたまへば、
「何ごとにかはべらむ。いかにはかばかしき御答へ聞こえさせたまはむ」
とて、うち笑ひてゐたり。君、入りたまへば、いとかたはらいたく、
「うちとけて、あやしき古人どものはべるに」と聞こえさす。
「まだ、おどろいたまはじな。いで、御目覚ましきこえむ。かかる朝霧を知らでは、寝るものか」
とて、入りたまへば、「や」とも、え聞こえず。
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/21 03:36 |
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:20 |
君は何心もなく寝たまへるを、抱きおどろかしたまふに、おどろきて、宮の御迎へにおはしたると、寝おびれて思したり。
御髪かき繕ひなどしたまひて、
「いざ、たまへ。宮の御使にて參り來つるぞ」
とのたまふに、「あらざりけり」と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、
「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」
とて、かき抱きて出でたまへば、大輔、少納言など、「こは、いかに」と聞こゆ。
「ここには、常にもえ參らぬがおぼつかなければ、心やすき所にと聞こえしを、心憂く、渡りたまへるなれば、まして聞こえがたかべければ。人一人參られよかし」
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:07 |
とのたまへば、心あわたたしくて、
「今日は、いと便なくなむはべるべき。宮の渡らせたまはむには、いかさまにか聞こえやらむ。おのづから、ほど経て、さるべきにおはしまさば、ともかうもはべりなむを、いと思ひやりなきほどのことにはべれば、さぶらふ人びと苦しうはべるべし」と聞こゆれば、
「よし、後にも人は參りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまにと思ひあへり。
若君も、あやしと思して泣いたまふ。少納言、とどめきこえむかたなければ、昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、自らもよろしき衣著かへて、乗りぬ。
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:05 |
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:03 |
二條院は近ければ、まだ明うもならぬほどにおはして、西の対に御車寄せて下りたまふ。若君をば、いと軽らかにかき抱きて下ろしたまふ。
少納言、 「なほ、いと夢の心地しはべるを、いかにしはべるべきことにか」と、やすらへば、
「そは、心ななり。御自ら渡したてまつりつれば、帰りなむとあらば、送りせむかし」
とのたまふに、笑ひて下りぬ。にはかに、あさましう、胸も靜かならず。「宮の思しのたまはむこと、いかになり果てたまふべき御ありさまにか、とてもかくも、頼もしき人びとに後れたまへるがいみじさ」と思ふに、涙の止まらぬを、さすがにゆゆしければ、念じゐたり。
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:02 |
こなたは住みたまはぬ対なれば、御帳などもなかりけり。惟光召して、御帳、御屏風など、あたりあたり仕立てさせたまふ。御几帳の帷子引き下ろし、御座などただひき繕ふばかりにてあれば、東の対に、御宿直物召しに遣はして、大殿籠もりぬ。
若君は、いとむくつけく、いかにすることならむと、ふるはれたまへど、さすがに聲立ててもえ泣きたまはず。
「少納言がもとに寝む」
とのたまふ聲、いと若し。
「今は、さは大殿籠もるまじきぞよ」
と教へきこえたまへば、いとわびしくて泣き臥したまへり。乳母はうちも臥されず、ものもおぼえず起きゐたり。
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 01:00 |
仙 道 |
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若 紫 |
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2005/11/20 00:58 |
明けゆくままに、見わたせば、御殿の造りざま、しつらひざま、さらにも言はず、庭の砂子も玉を重ねたらむやうに見えて、かかやく心地するに、はしたなく思ひゐたれど、こなたには女などもさぶらはざりけり。け疎き客人などの參る折節の方なりければ、男どもぞ御簾の外にありける。
仙 道 |
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